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建築閑話


インドの現代建築【コジジ教授の建築閑話・第4話】

  建築閑話・第4回は、人口13億人を誇るインドの現代建築を取り上げます。   インドの現代建築    これからご覧いただく写真は私が自ら撮ったものですが、 先ずは最新のオフィスビル群。まるで万博のパビリオンのようです。 最新ショッピングセンターのトイレはまるで高級ホテルのようです。 古くからインド社会に根付く身分制度カースト    ここからが本題なのですが、インドは実に混沌とした複雑怪奇な社会です。 例えばカースト制ですが、日本の士農工商を思い浮かべる方が多いですが、 それはほんの一部なのです。同様の「身分のカースト」は上から順に、 バラモン(司祭)、クシャトリア(王侯士族)、ヴァイシヤ(庶民)、シュードラ (隷属民)の4つに分類され、その下には更にアンタッチャブル(不可触民)が 現存します。不思議なのは例えば公務員試験など、カーストごとに人数配分があり、 合格するためにわざと下級の申告をする人がいるとか。  第2のカーストは「職業のカースト」。 映画俳優のカーストも実在し、俳優目指して親族になるべく物凄い葛藤の様が 映画になっているくらいです。 父親が人力車の車引きならば、その子供も車引きとなるのが自然なのです。    そして第3のカーストが出身地のカーストです。これは分かり易く、〇〇部落の 出身だとかになります。インドは29州と7つの直轄地がある、いわば合衆国で あります。米国同様に州によっては法律も変わります。禁酒の州もあります。 余談ですが私が関わった都市開発プロジェクトは、2つの州にまたがり 法制度が異なった為、進展できず頓挫しました。    この3つのカーストが三次元的にマトリックスで交差しているのです。 実に複雑怪奇であり、インドの人々でも混乱するくらいです。 現在一番人気の「Web site」は「婚約情報サイト」であるとのこと。 最適相手探しも複雑きわまりないことが理解で出来ますね。

アジャンダ・エローラの石窟群【コジジ教授の建築閑話・第3話】

インドが誇る珠玉の遺産、アジャンタ石窟とエローラ石窟  もう一つインドの遺跡で絶対に見逃せないもの、それが「アジャンダ・エローラの石窟群」であります。ムンバイから北東に380Kmのデカン高原の岩山に広がっています。 アジャンダ石窟群は1819年に英国人が虎狩りの際に偶然発見した6~7世紀の仏教遺跡。500mにわたり30石窟がずらっと並んでいます。中国の敦煌莫高窟の小型版でしょうか。 古代三大宗教「仏教・ヒンドゥー教・ジャイナ教」の石窟寺院が一堂に会する世界で唯一の場所 私がお勧めしたいのはもう一つの「エローラ石窟群」であります。 こちらは南北約2㎞にわたり6~10世紀の、仏教12窟、ヒンドゥー教17窟、ジャイナ教5窟、の合計34窟が連なっています。 すなわち仏教+ヒンドゥー教+ジャイナ教が500年にわたって一堂に会する唯一の石窟群なのであります。 特に第16窟の「カイラ―サナータ寺院」は高さ32m、幅45m、奥行85mの巨大寺院ですが、写真をジックリとご覧ください。 これは石積みではなく、岩山をコツコツと彫り込んだ巨大な「彫刻建造物」なのであります。100年以上にわたり石工たちが何代も受け継ぎ完成させた、私の一押し、傑作中の傑作建築であります。    さて、昨今の世界情勢ですが、極論すれば、ロシア・ウクライナ戦争もイスラエル・パレスチナ戦争も、どちらもキリスト教やイスラム教が争いの根幹にあると思えてなりません。 なぜここまで徹底抗戦となってしまうのか。その主たる原因は一神教だからです。 絶対の神は一つであり、他を認めないのですから妥協できるわけがありません。

タージマハール【コジジ教授の建築閑話・第2話】

  タージマハルは、誰もが認めるインドの観光名所NO.1の遺跡ですが、皆さんはどの程度後存じだろうか?と思い、今回取り上げることにしました。 宮殿さながらの豪華絢爛な王妃の墓廟  実はこの建築物は宮殿ではなく、亡くなった王妃の墓廟なのであります。そして皆さんが訪れる建物は「白の墓廟」であり、ヤムナー川を挟んで対峙する場所に「黒の墓標」も完成されるはずだったのです。  17世紀当時のインドはムガール帝国の統治にて、第5代皇帝シャー・ジャハーンの支配下でありました。最愛の王妃であるムムターズ・マハル(この名がなまってタージマハールになったという)のために建設したのであります。  イスラム教では偶像崇拝を禁じています。したがって、モスク(イスラム教の礼拝堂)以外の豪華な建築は禁じられていることから、20年近い年月をかけて壮大な墓廟として建築されました。尚、イスラム教では「対・つい」を好むことから自身の「黒の墓廟」を対岸に計画したのでした。ですが息子の代となり、シャー・ジャハーンは晩年、幽閉されることとなり、「黒の墓廟」は計画のままに終わりました。   ちなみに中央の本殿を囲むように、高さ42mのミナレットが4本立並んでいますが、よく見ると若干外側に開いた形で建設されています。この地域では地震が起きませんが、万一備え、倒れた時に本殿を破壊しないように配慮されたものであります。 尚、現在のインド人は80%がヒンデゥー教徒ですが、彼らは墓を作りません。火葬したのちその灰をガンジス河に流すのが基本です。ですからインドには墓地が無いのです。世界一の人口を誇る大国ですが、このことだけでも土地活用の大いなる助けになっていることは間違いありません。  お楽しみ頂けましたでしょうか?  次回も、乞うご期待! 【豆知識】特定の人物を祀る「廟」は世界各地に存在している  「廟」は日本やアジアだけではなく、世界各国に存在するものです。なかには世界遺産や観光スポットとして非常に有名なものもあります。例えば、中国山東省曲阜市の「孔廟」は、孔子を祀った孔子廟の中でも中国最大の孔子廟です。歴代の皇帝たちにより増築や補修を繰り返し、今では壮大な建築群となり、1994年ユネスコの世界遺産に登録されました。  死者を祀り大事にする「廟」。実際の考え方や解釈、種類は幅広く存在しますが、身の回りにある神社やお寺の中の「廟」にあたるものを改めて見てみると新たな発見につながるかもしれません。

インドの階段井戸【コジジ教授の建築閑話・第1話】

 WEBマガジン「OFFICE PLUS」で、本コラムの執筆を担当することになりましたコジジ教授です。建築に関する四方山話を気楽にお伝えできれば幸いです。  特に海外滞在が延べ20年近くありましたので、掘り出し物のウンチクをご披露できればと考えております。宜しくお願いいたします。 もともと王宮だった地下に続く階段井戸  記念すべき第1話は、インドの建築物についてお話いたします。  ご紹介したいのは「階段井戸」と称する遺跡であります。インド旅行の観光コースには全く入っていない隠れた名所です。私が訪れたのは、インド北西部ラジャスターン州の州都ジャイプール市から約90kmの郊外、アバネリ村にひっそりと存在する「チャンド・バオリ」階段井戸であります。  ちなみにジャイプール市は世界遺産の宝庫の観光都市であります。旧市街はピンクシティと称されるピンク色の街並みやシティパレス(王宮)、郊外にはアンバール城など見どころ満載のエリアですが、今回の記事ではパス。  写真をご覧あれ。逆ピラミッド型に四角錐状に掘り下げた巨大な石窟であります。   各壁面を階段が13層、総数3500段も幾何学模様的に続いています。遺跡というよりも見事な芸術作品にも見えます。  実はこれは9世紀、1300年前の王宮跡なのです。水の出るオアシスそのものを掘り下げて宮殿にするという発想は見事であります。 映画「ザ・フォール」を見て遺跡訪問  内輪話をしますと、私がこの遺跡訪問を思い立ったのは「ザ・フォール/落下の王国」(2006年作品)というファンタジー映画を見たからなのであります。その一場面の撮影にこちらが使われた次第であります。なんとインドにはこの他にも、らせん状の「ダーダハリ」階段井戸(グジャラート州)なども存在します。ご興味ある方はぜひ検索してみてください。  お楽しみ頂けましたでしょうか?  次回も、乞うご期待!

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