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タージマハール【コジジ教授の建築閑話・第2話】

  タージマハルは、誰もが認めるインドの観光名所NO.1の遺跡ですが、皆さんはどの程度後存じだろうか?と思い、今回取り上げることにしました。


宮殿さながらの豪華絢爛な王妃の墓廟

 実はこの建築物は宮殿ではなく、亡くなった王妃の墓廟なのであります。そして皆さんが訪れる建物は「白の墓廟」であり、ヤムナー川を挟んで対峙する場所に「黒の墓標」も完成されるはずだったのです。

 17世紀当時のインドはムガール帝国の統治にて、第5代皇帝シャー・ジャハーンの支配下でありました。最愛の王妃であるムムターズ・マハル(この名がなまってタージマハールになったという)のために建設したのであります。

 イスラム教では偶像崇拝を禁じています。したがって、モスク(イスラム教の礼拝堂)以外の豪華な建築は禁じられていることから、20年近い年月をかけて壮大な墓廟として建築されました。尚、イスラム教では「対・つい」を好むことから自身の「黒の墓廟」を対岸に計画したのでした。ですが息子の代となり、シャー・ジャハーンは晩年、幽閉されることとなり、「黒の墓廟」は計画のままに終わりました。

タージマハール

  ちなみに中央の本殿を囲むように、高さ42mのミナレットが4本立並んでいますが、よく見ると若干外側に開いた形で建設されています。この地域では地震が起きませんが、万一備え、倒れた時に本殿を破壊しないように配慮されたものであります。

4本立ち並ぶミナレット

尚、現在のインド人は80%がヒンデゥー教徒ですが、彼らは墓を作りません。火葬したのちその灰をガンジス河に流すのが基本です。ですからインドには墓地が無いのです。世界一の人口を誇る大国ですが、このことだけでも土地活用の大いなる助けになっていることは間違いありません。

 お楽しみ頂けましたでしょうか?

 次回も、乞うご期待!

【豆知識】特定の人物を祀る「廟」は世界各地に存在している

 「廟」は日本やアジアだけではなく、世界各国に存在するものです。なかには世界遺産や観光スポットとして非常に有名なものもあります。例えば、中国山東省曲阜市の「孔廟」は、孔子を祀った孔子廟の中でも中国最大の孔子廟です。歴代の皇帝たちにより増築や補修を繰り返し、今では壮大な建築群となり、1994年ユネスコの世界遺産に登録されました。

 死者を祀り大事にする「廟」。実際の考え方や解釈、種類は幅広く存在しますが、身の回りにある神社やお寺の中の「廟」にあたるものを改めて見てみると新たな発見につながるかもしれません。

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この記事を書いた人

コジジ教授

1952年8月28生 資格:一級建築士  早稲田大学大学院卒業。専攻は建設工学(都市計画)。大手商社や不動産会社で土地開発や施設運営を担当。海外赴任歴が長く、イラク・バグダッド、台湾、中国・北京、スリランカ・コロンボと数多くの国に駐在。その後、私立大学にて教鞭を振るう。現在も技術顧問として不動産会社で現場に立ちながら若手の育成・指導も行う。趣味は茶道、囲碁。

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