契約に使われている用語の解説【起業家の窓・第6回】
さて、今回の「起業家の窓・第6回」では第5回に続き、契約書に使われている用語について考えてみましょう。
契約書に良く出てくる「又は」「若しくは」とか、「及び」「並びに」といった、細かい用語の意味の違いが分からず「同じ意味では?」と疑問に思ったことはありませんか?
法令用語においては、読み手によって文書の解釈が変わることがないよう、法令用語は実は厳密なルールに則って整理されており、「又は」「若しくは」といった用語も厳密に使い分けられています。
そこで、今回は契約書に使われる用語の意味について見ていきましょう。
「又は」「若しくは」の意味
どちらも接続詞であり、日常用語としては意味に違いはありません。法令用語としては、両者は厳格に使い分けられています。
「又は」は上位のカテゴリーを選択的に並べる際に、「若しくは」は下位のカテゴリーを選択的に並べる際に用いられます。
日常用語で説明すると“コーヒー若しくは紅茶又はビール若しくはハイボール”となります。「ソフトドリンク若しくはお酒」を細かく説明したものです。
「及び」「並びに」の使いわけ
こちらも、法律文書や公的文書においてしばしば使用される接続詞ですが、微妙な違いがあります。
「及び」は、列挙する項目や要素が同等である場合に使われます。つまり、前後の要素は同様の重要性や地位を持っていると解釈されます。
そして、「及び」でまとめられる集団同士をつなげる場合に「並びに」を使います。
性質の違うものをグループでまとめられる場合で、さらにグループが複数ある場合です。
「サラダ及びステーキ並びにコーヒー」となります。「食事並びにドリンク」を細かく説明したものです。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の使いわけ
よく出てくる表現ですが「いったいどれが一番早い?」「具体的には期間はどれくらい?」
と分かりにくい法律用語ですね。
この3つはいずれも「いつまでに」という期限を表す用語で一番緊急度が高いのが「直ちに」で「速やかに」「遅滞なく」の順で緊急度が下がっていきます。
しかし、具体的な期間が決まっているわけではありません。
「直ちに」は「それを行うことが可能になった時点」
「速やかに」は「なるべく早く」
「遅滞なく」は「なるべく早く、ただし合理的な理由による遅れは許される」と一般的には解されています。あくまでニュアンスだと思っておいた方が良いでしょう。
期限をきっちり決めたい契約書を作る場合には「○営業日以内に」のように具体的に定めることをお勧めします。
「その他」「その他の」は注意が必要
日常生活ではこの2つの意味の違いを特に意識しませんが、法律用語としては「その他」と「その他の」では意味が異なりますので注意が必要です。
「その他」は、前後が並列関係にある場合に使用します。たとえば、「賃金、給料 その他 これに準ずる収入」
というように、「その他」の前にある言葉と後にある言葉とは、並列関係にあるのが原則です。
「その他の」は、前にある言葉が後にある言葉の例示である場合に使用します。たとえば、
「内閣総理大臣 その他の 国務大臣」「俸給 その他の 給与」というようになります。
以上、契約書でよく見られる間違えやすい法律用語、わかりにくい法律用語について解説しましたが、もちろんこれら以外にも注意すべき法律用語は多数存在します。
わかりやすく明快で、誰が読んでも同じ意味に解釈できる契約書が「良い契約書」です。
法律用語は厳密なルールに則って整理されており、用語も厳密に使い分けられています。
したがって、当事者間で契約内容の解釈にズレが生じないよう、用語のルールに則って契約書を作成することをお勧めします。
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